今開催中の上海万博が世界中の注目を集めていますが、その上海から上海音楽界をリードする若き権威、張國勇さんをお招きしての今回の定期公演です。張さんとは初顔合わせとなりますが、逞しい体にポロシャツをサラリと着こなした姿は、凛として精悍な印象です。
最初の練習はお国モノの「瑶族舞曲」から始まりました。
中国民謡ということで、我々のイメージどおりのいかにも中国!といった感じの曲で、まず挨拶としてコンサートの幕開けには最適だと思われます。短い曲ですが流石にお国モノだけあって、微妙なポルタメントやリタルダンドのかけ方など本場の味を伝授して頂きました。
「ドボ8」は超有名な名曲で、数え切れない程演奏し、聴きましたが、張さんは実に正攻法のアプローチで、書かれている事を当たり前に作り上げていかれます。「そんなの当然のコトだろ!!」とツッコミが入りそうですが、しかしその「当たり前の事を当たり前にやる」ことが、実はなかなかできていないものなのですね…!音の強弱やテンポなど、ごく基本的な事でさえ幾度も演奏しているうちに知らず知らずクセが付いていて慣例化してしまっているものなのだと、張さんのリハーサルでまさに目からウロコが落ちた思いです
また音の出し方や響きにもより神経を使わなければならないと改めて感じました。
とにかく自然で正直で清潔で情熱的な「ドボ8」だと私は思っています。きっと聴衆の皆さんにも名曲の再認識をして頂けるものと確信しています!
さて、名手ディミトリ・アシュケナージさんをお迎えしてのコンチェルトは、コープランドのクラリネット協奏曲。楽器の特性を遺憾なく発揮させるこの曲を、アシュケナージさんは実に美しく軽やかに楽しそうに吹ききっておられました。いやぁ~凄いです!
ワイルド系イケメンといった風情のアシュケナージさん、その演奏を聴いたら「惚れてまうやろ~
」となるコト必至です!またこの曲は弦楽器とハープ,ピアノで伴奏するのですが、サティのような静かな始まりからやがてカデンツァとなり、その後拍子やリズムが複雑に入り組んだ如何にもコープランドらしいトリッキーな速いパートへ突入します。急きょ初日からのオケ練習となった事からも、その難しさが伺えるでしょう…しかし聴衆にそんな必死さを悟られてはなりません。本当に楽しく面白い曲なのですから!
H.T